受審組織と認証機関とのやり取りや関係から、ベテラン審査員からの課題提供です。
まずは、以下(カテゴリーB)をお読みください。
【 カテゴリーB
7月にOA機器のレンタル会社へ審査に行った。審査に行く前に前回の指摘事項について確認していくことにしている。指摘事項は、4件あった。そのうちの2件は、本当にカテゴリーB(軽微な不適合)なのかと疑問に感じるものであった。
a)OA機器の保守・修理プロセスに関連する、次の力量が特定できませんでした。
①OA機器のクリーニング作業/作業員に必要な力量
②出荷前確認者に必要な力量/任命基準(QA機器出荷の許可者)
(指摘の規格要求事項:7.2)
b)QMSのパフォーマンスと有効性について、マネジメントレビューにおいてトップインタビューにより評価されていることを確認しましたが、評価結果が記録されていませんでした。
(指摘の規格要求事項:9.1.1)
a)、b)の是正処置は、どのようになっているだろうかと期待を持ってみた。
a)力量認定表にてOA機器のクリーニング作業員および出荷前確認者の力量を定めた。
b)マネジメントレビューからのアウトプットに評価の欄を追加し、マネジメントレビュー時に評価をし、適切な文書化した情報を保持するようにする。
そうか、審査した審査員は、a)は、クリーニング作業員及び出荷前確認者について、力量評価表に必要な力量を明確にし、資格認定することを求めたようだ。b)では、マネジメントレビューのアウトプットに評価結果の欄を、追加とあるように評価結果を明示するように要求したようだ。審査に行き、確認することにした。
管理責任者インタビューで、前回指摘事項カテゴリーBについて、確認した。するとa)及びb)について、是正処置計画書を提出したが、社内で検討した結果、資格認定表は、更新した(是正処置計画書提出のまま)が、資格認定を行っておらず、マネジメントレビューのアウトプットについても、フォーマットの変更(評価欄追加)を是正処置計画書に書いたが、実際には行っていなかった。
なぜだろうと管理責任者へ確認した。a)については、OA機器のクリーニング作業員及び出荷前確認者は、社員が行っており、OA機器がきれいになっているかであり、何かが付着していないかを見ており、出荷前確認者は、OA機器が稼動するかどうか、電源を入れて動くかどうかを見ているだけであるという。従って、クリーニング作業員及び出荷前確認者ともに入社後1ヵ月のOJTでできるようになるという。OJTの結果、不適な人は、やらせていないという。確かに聞いていると、普通の人であれば、できることではないかと感じた。またb)についてもいちいち評価して、どうとか書くよりも、問題があれば、それなりに指示があり、対処することにしているではないかとあった。
しかし、前回の審査でなぜ、カテゴリーBを受けたのであろうか。管理責任者へ、更に聞いてみた。すると規格要求事項の説明を受け、クリーニング作業員、出荷前確認者は、「品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務」を行っているのではないかと迫られ、「確かにそうだ」といったという。マネジメントレビューの結果について、「品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性を評価」をした結果が良かったのか、どうかの評価結果がないことは、「評価したことにならないし、適切な文書化した情報の保持にならない」と言われたという。
審査員と受審組織との間に大きな違いがあるようだ。私が思うには、a)については、規格では、力量を求めているが、果たして力量評価表で規定し、資格認定する必要があるだろうか。ここで扱っているOA機器は、パソコンや複写機であり、一般の人は、扱ったことがあるであろうし、きれいかどうかの判断、電源が入ったかどうかはわかるであろう。従って、資格認定表に書くまでもなく、ましてや資格認定をする必要はないのではないか。審査の中で、顧客から苦情が来ているか、直接クリーニング作業員、出荷前確認者がやっている姿を見て間違いやすいかどうかを確認すべきではないか。マネジメントレビューでインプット情報について検討した結果(評価)が良かったかどうか、もし問題があれば、次に向けた課題、ペンディング事項となっているだろう。これがないということは、問題がなく、良い評価であったのではないか。「便りがないことは良い便りだ(元気なことだ)」という、ことわざもあるではないか。
前回の審査で、当該審査員から規格要求事項を突き付けられ、何も反論できなかったようだ。しかし審査後社内で検討した結果、「そこまでは、」となった時、審査機関に確認を行ったかと聞いたが行っていないという。受審組織と審査機関は、対等の立場であり、審査をよりよくするためには、審査の状況、現場の状況を率直に話していく必要があるのではないか、審査員は、受審組織の状況、顧客が求めている品質状況(顧客からのクレーム情報)を考慮した上で審査を進める、また受審組織の文化、風土を考慮していくことが必要であろう。受審組織及び審査員のこのような行為から、受審組織の品質マネジメントシステムがより堅固なものになっていくであろう。
注 ISO9001:2015 より、抜粋
7.5 文書化した情報
7.5.1 一般
組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。
a) この規格が要求する文書化した情報
b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報
注記 品質マネジメントシステムのための文書化した情報の程度は,次のような理由によって,それぞれの組織で異なる場合がある。
- 組織の規模,並びに活動,プロセス,製品及びサービスの種類
- プロセス及びその相互作用の複雑さ
- 人々の力量
(太字は、著者による) 】
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過度な指摘事例など、その実状から次のような課題が考えられます。
① 受審組織が不当な指摘に対して反論できる力量が不足、規格に対する理解度不足。
行き過ぎた指摘に対して社として正々堂々と反論してよい。資格認定など必要ない
と考えていると。(組織の課題)
② 審査員が持論を展開し、受審組織に押し付けているように見える。(審査員の課題)
③ 審査員の力量にバラツキがあり、認証機関としてそのバラツキを
を低減させるための勉強会がどの程度実施されているか?(認証機関の課題)
というような課題が浮かびあがってきます。」
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事務局 佐野 興一