ISO9001:2015における品質マニュアルについて

ISO9001:2015版への移行が始まってから、約1年半が経過する。
移行審査は、ようやく始まった感がする。
その中で、2015版では、品質マニュアルは、要求事項ではなくなった。しかし14001(環境マネジメントシステム)や27001(情報セキュリティマネジメントシステム)と同じく要求事項ではないが、審査機関では、品質マニュアルを暗に求めている。コンサルタントや雑誌なども品質マニュアルを作成することを推奨している。

私は、6組織の移行審査を実施した(2017年4月現在)。
規格要求事項と同じく4.1から10.3まで、そのまま書いているものが、5組織あった。
1社のみ、品質マニュアルに、文書管理やマネジメントレビュー、内部監査等の手順を書いたものがあった。

過去多くの組織は、規格の要求事項4.1から8.5.3までをそのまま書いている品質マニュアルが多かった。
今なお、それを踏襲しているようだ。
なお、後者は、品質マニュアルは作成していなかったが、審査機関から品質マニュアル又は品質マニュアル相当を再三、求められ、手順をいくつかまとめたものを品質マニュアルとして提出したと聞いた。

過去、ISO9001:2008での審査時、品質マニュアルは、どのように作成するとよいかを尋ねた。
当組織は、規格の要求事項4.1から8.5.3までをそのまま書いていた。まず最初に品質マニュアルは、読まれているかと聞いた。
すると、管理責任者以外は、読んでいないのではないかとあった。
誰のために作成しているのですかと嫌味かもしれないが、聞いてみた。
多少時間をおいて、審査機関、審査員のために作成しているのかもしれないとあった。

いや、審査員は、何回も審査に行き、規格要求事項は、頭の中にあり、そらんじているぐらいだ。
従って、皆さんが、どんな規定、手順書を作っているかを知りたい。
それも文書・記録の一覧表があり、それでわかる。審査員は、審査対象組織に対しては、専門性を付与されており、どんな文書・記録がなければならないかもわかっている。
そして、皆さんの業務がどのように進められているかもおおよそ知っている。

しかしこれらを再確認したい。それは、ISO9001:2008で、品質マニュアルに対する要求事項b)品質マネジメントシステムについて確立された“文書化された手順”又はそれらを参照できる情報、c)品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述 ではないかと話した。
そして、認証登録するうえで、a)品質マネジメントシステムの適用範囲,除外がある場合には,除外の詳細、及び除外を正当とする理由(1.2参照) が必要なんですと話した。

2015版では、品質マニュアルは、要求事項ではなくなった。
それは、審査員は組織の業務内容を熟知し、文書・記録等がどうあらねばならないかを知っているからであろう。

また従来のa)は、「4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」で、審査の中で、確認することになっている。またこの内容は、変化する4,1、4.2等を踏まえて、毎回審査することになっており、その点が従来と違っている。

このように考えた時、品質マニュアルは、必要か、不必要か、又は必要ならどのように作成すべきかを検討しなければならない。
多くの審査機関が品質マニュアルを求めている。
組織は、認証を継続していく上で、断るのは、難しい。

それで、審査機関向けに作成しては、どうだろうか。審査機関は、審査計画書を作成して、審査をすることになっている。
従って、審査計画書ができ、審査するには、どんな内容があればよいのだろうか。
それは、組織は、過去の経験からわかることだろう。

文責:藤井 敏雄(認証システム見直しセミナー講師)

特定非営利活動法人日本BCM協会