リスクとは、何か

日常業務や事業の目的を達成するには、「リスクとは、何か」を正しく理解しておくことが求められることは言うまでもりません。

そうでなければ、企業を取り巻く内外の状況について抜けのない、的確な現状把握が難しくなる恐れがあります。

このような不備な現状把握からPDCA サイクルをいくら回しても大した結果は得られないことは明らです。 

問題は、「リスクとは、何か」を正しく理解できていない企業が多いという現実です。

日本人の潜在意識の中にリスクは、「危険」とか、「危機一髪」という先入観が深く沁みついているため、リスクの定義を正しく理解する上で妨げになっていると思われます。

では、リスクを正しく理解するには、どうすればよいでしょうか。

念のため、主要な国際規格で定められている「用語の定義」に立ち戻って確認しておくと、身近なところでISO9000:2015版では、リスクとは、「不確かさの影響」と定義されている。

 例えば、不確かさとは、ある製品の生産工程において、製造装置の故障が発生し、計画通りの生産量を確保できなかった。

ここでは、製造装置がいつも安定して動いてくれるとは限らないという不確かさと、この不確かさのため、計画通り実施できなかった、計画に影響を与えた又は阻害となった要因、これをリスクとして扱う訳です。

また、次の例では、ある組立工程においてムリ・ムダ・ムラがあることが分かり、生産効率を落としている要因であることが判明した。

ここでは、ムリ・ムダ・ムラが事業目的を阻害する要因として、リスクとして扱うことになります。

 リスクとは、個人の日常生活を含め、日常的に仕事上で平時に発生する問題点「事業目的の遂行を阻害するあらゆる要因」をリスクとして取り扱う必要があるということであり、そのリスクに応じたリスク対応が必要になってきます。

しかし、多くの企業が、非常時などの不測の事態や重大リスクに焦点を合わせ過ぎて手順化されているケースが多く見られます。

このため、企業を取り巻く内外の課題から的確なリスク及び機会の洗い出しを妨げ、かつ、リスク分析・特定に伴う改善活動を難しくしているのではないでしょうか。

 当協会では、これらのアプローチ支援が必要な場合には、「リスクとは、何か」、短期間の養成講座開催など個々に計画し、技術相談・支援を行う用意があります。

気軽にご相談ください。

(執筆:佐野 興一 2021年10月3日)

 

 

 ISO9000:2015版における「リスク」の定義

リスク:「不確かさの影響」

注記1:影響とは、期待されていることから、好ましい方向又は好ましくない方向に乖離することをいう。

注記6:この用語及び定義は、ISO/IEC専門業務用指針―第1部:統合版ISO補足指針の

附属書SLに示されたISOマネジメントシステム規格の共通用語及び中核となる定義の一つをなす。

薬(クスリ)とリスク(副反応、副作用)

新型コロナウィルス感染予防にワクチン接種が進められている。主なものにファイザー製やモデルナ製、アストロゼネカ製などがある。すでに接種を終えた人が多数いるが、副反応がでた人も多くいる。注射部位の痛みや発熱、頭痛、倦怠感、疲労そのほか、アレルギー反応によるアナフィラキシーなどがあげられている。偽ニュースでは、遺伝子が書き換えられるとか、妊娠、出産に影響が出る等がSNSほかに出ている。

今回ワクチン接種でいろいろと副反応が報じられ、リスクを事前に知ることができた。ワクチン接種は、個人の判断によるが、これだけのリスクを考慮しながら多くの人が接種したのは、コロナに対する脅威からではないか。

ワクチンは、1つの薬である。薬の処方にこれだけリスクを考えたことは、少ないのではないか。毎年冬を迎えるにあたり、インフルエンザ予防でワクチン接種をするが、副反応を考えて接種を受けている人は少ないのではないか。

当の私は、インフルエンザワクチン接種で副反応を考えて接収したことはない。また持病で糖尿病や高血圧があるが、これまで医師の指示に従い処方したものを副反応、副作用を考えずに、処方されたものを薬局に行き、薬をもらい受け、服用してきた。

しかし糖尿病では、ある時副作用を聞き、薬局で調べてもらった。私の身体に異常が発生しているのは、薬の影響であることを知った。それで、医師に話をして、その薬を止めてもらうように話した。しかしその医師は、副作用はないと主張し、糖尿病を良くしたいなら、薬を飲むようにと言った。さらに薬局に電話して薬の副作用について、患者に話すなと言った。これでは、話にならないと考え、医師(病院)を変えた。

同じく高血圧の降圧剤でも同じことが発生した。降圧剤ニフェジピンCR錠を処方され、飲んでいたら、足がむくみ、足に力がなくなり、頭が痛くなった。インターネットで副作用について検索したら、私の症状と同じものが出ていた。医師は、薬の副作用は、知っていたが、血圧が高いと脳梗塞になりやすいからと継続して飲むようにと勧められた。しかし私は、飲むのを止めた。その後、脳神経外科の診察を受け、この話をしたら、副作用が出ているなら、服用をやめるのは、正解だと聞いた。その後、降圧剤を勧めた医師の継続した治療をやめた。

これらのことから、私や多くの人は、医師から薬を処方してもらって、副反応、副作用の話を聞かずに服用している場合が多い。

今回ワクチン接種で得た教訓、接種前に副反応を聞き、対応を考えて接種を受ける。

薬は病気を和らげてくれる。しかし、副反応、副作用、これらはリスクである。今後医師から薬を処方されたら、副作用、副反応がないか確認するようにしなければならない。

HACCPの義務化

昨年から新型コロナウィルス(COVID-19)によるパンデミックが止まりません。こちらは現在も継続し、ここへきてデルタ株の発症者が急激に増えています。

それだけではなく、水害の方は数年前から台風等による大雨が猛威を振るい、数年前の関西の台風、一昨年の台風15号・19号に引き続いて今年も前線の影響で九州や中国地方を中心に大雨による災害が続いているという非常に厳しい自然災害に見舞われています。

被害に遭われた方にはお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を祈っております。

さて、これだけ色々リスクが顕在化すると、BCMもやることが多すぎて何から手を付けていいのやらという感じです。

そのような中で、ですが、飲食店や食品製造業者といった食品関係の事業者にはもう一つ手を付けなければならないものが増えてしまいました。

それは改正食品衛生法の施行です。

令和3年6月1日、我が国の改正食品衛生法が施行され、HACCPが義務化されました。

概要は、以下のサイトに概要が掲載されています。

HACCPに沿った衛生管理の制度化https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kaisei/haccp.html

しかし皆様あまりご存じないようで、飲食店の方に聞いても知らなかったといわれることが多々ありました。

そもそもHACCPとは何なのか。なぜHACCPが義務化されたのか。
ご存知でない方もいらっしゃるかと思いますので、順を追って説明していきたいと思います。

まずHACCPとは何でしょうか?
これはHACCPとは以下の単語群の略で、危害分析必須管理点と訳されます。

ざっくりいうと、食中毒等が発生しうるポイントを分析し、重要なポイントを継続的に管理等することにより、これらを未然に防ぎましょうというものです。

H・・・hazard=危害
A・・・analysis=分析
C・・・critical=必須
C・・・control=管理
P・・・point=場所・工程

例えば飲食店の場合、材料の納入や保存、調理、保管、提供といった手順があり、それぞれリスクが顕在化する要因があるわけです。

牛乳をテーブルの上に放置して菌が繁殖してしまった、従業員がトイレに行った際に手を洗わなかったため菌が食材や食器に付着してしまったなどが考えられるわけです。

このようなことが起こらないように、現状を分析し、といったシステム化(計画、手順の文書化と記録の保管等)をして、リスクの高いところを重点的に管理しましょうというものです。

ちなみにISOにも食品衛生の分野は存在し、ISO22001がこのHACCPにあたります。

日本でもJFS(一般財団法人食品安全マネジメント協会が作成した規格)という規格があり、同じようにHACCPのような管理をすることになっています。

当協会のメンバーでも対応できる方がいるので、導入を検討されていらっしゃる方はご相談ください。

なぜ義務化されたかということについてですが、これは世界的な流れです。

実は以前から世界的に食中毒防止が課題とされてきたのです。
観光という観点から食中毒防止が注目されています。
そこで、HACCP(ハサップと読みます)の義務化が世界的に進んだのです。

ちょっと遅めの韓国でも10年近く前に法律ができており、このようなことには敏感な欧州などはそれよりずっとまえに義務化されました。

我が国は先進国の中では、この方面で少々遅れをとっていたというのが実情です。
そこでいよいよ法令により義務化となったわけです。

平成30年に法改正し、今年6月から施行されました。

しかし新型コロナウィルスの第5波と重なってしまったためこちらが優先されてしまいそうで、何とも間が悪いことになってしまったものです。

では、施行されて何か変わるのでしょうか。
小規模企業の多い飲食業界です。
義務化して効果があるのかという疑問はあるでしょう。

これはあると考えられます。
飲食店や食品製造業は基本的に許可制です。
つまり許認可が必要となっています。

官公庁の資料を読む限り、ここで許認可の更新の必要書類として、今すぐではありませんが、HACCPが求めている計画、及び記録類を提出する必要が出てくることになります。
ですから変わらざるを得ません。

とはいえすぐに、というわけではないようですが、やらなければ事業ができないというリスクになっていきます。

飲食店などは非常に厳しい状況ではありますが、逆にHACCP導入の良い機会だととらえて、今HACCPを構築し、よりリスクに強い事業体へと体質を強化させましょう。

特に飲食店の場合、今なら保健所が指導してくれそうな雰囲気があります。
今のうちに相談してみてはいかがでしょうか。

東京都の保健所は、以下のサイトに掲載されています。

東京都福祉衛生局 都保健所一覧
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/hc.html

しかし、ある程度の規模の企業などはそのようなわけにもいかないものと思います。
そのときは当協会にご相談ください。HACCPによる手順の作成や記録の残し方につて、一緒に検討し、構築しましょう。

 

 

 

監視及び測定のための資源の審査

ソフトウェア開発会社の定期審査の前に、品質マニュアルを確認していたら、「7.1.5 監視及び測定のための資源」を適用不可能にしていることに気がついた。

どうしてだろうかと、審査の中で聞いてみたいと思った。

当受審組織は、登録審査から約15年が経過していた。

審査が始まり、まず管理責任者面談になり、確認してみた。登録審査以降、過去審査員、審査機関から適用不可能にしていて何ら問題になっていないという。

監視及び測定の資源は、検査、試験にハード及びソフト的な機器・装置を使用していないと説明があり、審査員、審査機関は、了解しているという。

時間があまりなかったので、個別のプロジェクト審査で確認することにし、管理責任者が同席することになった。

最初のプロジェクトで、スケージュール管理(監視)は、どのようにしているかを尋ねると工程表:ガントチャートが出てきた。

これは、工程を監視しているものですね。

受審組織の担当者は、はい、そうです、とあった。

ソフトウェアの完成度は、どのようにしてみていますか。

開発日程とバグの摘出状況を見るバグ死滅曲線を作成して管理していますとあった。

これら、ガントチャートやバグ死滅曲線が、監視及び測定のための資源ですと話し、皆さんは、監視及び測定のための資源を利用しているのです。

これらは、校正を必要とするものではないが、皆さんは、7.1.5項を適用不可能にしているが、実際は、適用しているのです。

また、「9.1 監視,測定,分析及び評価」と関連してみていくと良いです。

何を監視、測定するかを決めて、どのような手段(ハード的な機器・装置、ソフトの利用、図や表、QC7つ道具等)を説明し、9.1項、7.1.5項を絡めていけば了解されるでしょうと話し、了解を求めた。管理責任者も同席しており、このような話しは、過去から、一度も聞いたことがないという。

有効性評価

2021/7に審査した受審組織では、上司から部下に対する助言、アドバイスを「ワンポイントアドバイス」として管理する制度を設けて、一覧表を作成していた。どんな内容か、一覧表を読んでみたが、小さな指示や大きな指示があり、それらについて簡単な助言(アドバイス)が記載されていた。

必ずしも提出する件数の目標はなかったが、全社的取り組みで、業務のケアレスミスの防止やプロセス間(他部署間)の行き違い防止に役立っていた。いい制度だなと思った。

そこで、再度一覧表を見直した。同じアドバイスはないかを確認した。見た限りでは、同じものはなかった。

受審組織にこの制度の有効性をどのようにみていますかと聞いた。すると今のところ、有効性を必ずしもみていないとあった。ISO9001:2015 ではパフォーマンスを求めており、有効性を確認するように仕組みを追加したらどうかと提案した。

また、有効性をあげるために活用方法を検討するのも良いだろう。一覧表を基に部下への教育資料として活用することも検討に値する。

有効性の1つに同じようなアドバイスがないかをみていくのも良いだろう、定着して、効果を上げていると評価するのも良いのではないかと。また、業務の生産性、金額換算等でみていくのも良いのではないかと考えながら、審査の改善の機会にした。受審組織も受け入れてくれた。

情報や記録の価値

ある事象に対する情報やデータ**をある意図をもって解釈し、その価値を誇張したり、強調して編集され、加工されて伝達される、これが情報操作である。一般的に、悪い意味で用いられることが多い。報道機関にあっては、この行為は、本来の情報の価値を失うばかりでなく、人心を惑わし、扇動するリスクになりかねない。リスクとしてこれほど怖いものはない。やってはならない行為であり、禁じ手である。

 情報は、客観的事実を根拠にありのままに、迅速に、利害関係者に伝えてこそ利用価値がある。

何が起こったかの事実(事象)は、たった一つしかない。一つしかない事実が、立場によって意図が働けば、受け止め方も解釈が異なり、公平性に欠けることになる。例えば、原告と被告の関係、加害者と被害者の関係、製品やサービスに対する顧客満足評価の関係も製造側とユーザーとで異なることがよくあり、訴訟や賠償、製品品質問題、クレームなどが発生する。これらの事象は、あくまでも事実をよりどころとして利害関係者間で生ずる問題を社会通念、原理原則に照らし合わせて調停・裁定し、解決される。

しかし、これらの案件がある部分しか知らされないとか、誇張されて報道されたりとなれば、報道機関の責任は重大である。国際社会において将来の方向性のない、短絡的な考え方や営利目的に主眼を置いた偏った報道に終始すれば、間違いなく、国の将来を危うくする。

スポンサーも過大広告、宣伝に固執すれば、民衆の支持を失う。誘導するリスクを負っていることを常に自覚する必要がある。アスリート、観客、視聴者という顧客があってこそのスポンサーであることを認識することである、例えば、オリンピック開催時期を開催国の都合や気候を最優先すべきであり、スポンサーの意向で決めるものではない。このような短絡的な考え方に固執すれば、ゆくゆく、本来の顧客(スポンサーファーストではない)を失い、オリンピック精神に反し、衰退の一途を辿ることになるであろう。金が掛かり過ぎるという理由で積極的に開催国として名乗りを挙げる国や都市の減少傾向がすでに始まっている。

一方、記録の価値とは、何故、記録をとる必要があるかは、システムや仕組みを維持・改善するために記録をとる場合と計画目標に対する達成状況を評価(検証)するための2つがある。いずれの場合においても検証で最も重要なことは検証データをどこまで掘り下げて客観的事実として捉えることができるかであり、そこから先は推測(仮説)しかできない領域であることを明確に切り分ける必要がある。とった記録がどこまで客観的事実として分かったこととして利用できるかをはっきりさせる。つまり、とった記録に推測も含めた拡大解釈の重荷を課してはならないのである。それを許すと、折角とった記録が、次の段階で適切な見直し計画を立てることを難しくして効率の良い、有効な検証データが得られない、無駄な計画になり兼ねないのである。事実か推測かを明確に識別することは、見直し計画の最適化に不可欠な前提条件を提供していると言っても過言ではい。

 

*情報:意味のあるデータ、**データ:對象となる事実

注)用語の定義は、ISO9000:2015「品質マネジメントシステム-基本及び用語」による。

                      

執筆:佐野 興一

令和2年度 BCP実践促進助成金

新型コロナウィルス(COVID-19:略称「新型コロナ」)が猛威を振るい始めて早半年が経とうとしています。
ロックダウン等の施策や自主的な対策により一時は治まっていたものの、夏本番を迎える現在、新型コロナは再度流行してきています。

今回は、経済的に余裕がないという理由で国では有効な対策があまり打てていないのが現状で、春先の対策が元の木阿弥になってしまうのではないかと懸念されます。ここにおいて、企業や組織も自主防衛が必須となっていると考えられるでしょう。

そのような中、東京都では中小企業者等が策定されたBCPを実践するための設備等の導入に要する経費の一部を助成する助成金、「BCP実践促進助成金」の申請者を募集しています。

BCP実践促進助成金
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/bcp.html

助成対象事業者は以下の通りです。
下記(1)~(3)のいずれかの要件を満たしてBCPを策定した中小企業者(小規模企業者)及び中小企業団体
(1)平成29年度以降に公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下:公社)総合支援課が実施する「BCP策定支援講座(ステージ1)」を受講し、受講内容を踏まえたBCP
(2)中小企業強靱化法に基づく「事業継続力強化計画」の認定を受け、その内容に基づいて作成したBCP
(3)平成28年度以前の東京都又は公社が実施したBCP策定支援事業等の活用により策定したBCP

助成対象経費は、策定されたBCPを実践するために必要な設備・物品の購入、設置に係る費用全てで、助成上限額も1500万円(下限額:10万円)とかなりの額が助成されます。

助成率も1/2~最大で4/5と、東京都の本気度がうかがえます。
対象事業者のハードルが少々高いかもしれませんが、会社が新型コロナのクラスターになってしまうと存亡に関わる問題になりかねません。

東京都の中小企業におかれては、本助成金を活用して、この機会にぜひBCPを構築していただければと考えております。

もし本助成金についてご相談等ございましたら、お問合せフォームよりご相談ください。

今こそBCM・BCPの構築を!

新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威を振るい始めて1か月余りが経過しました。
発症された方が一日も早く回復されることをお祈りするとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。

さて、ついにこのCOVID-19はパンデミックとなり、世界大戦に匹敵するような経済的被害が発生してしまいました。我が国経済も深刻な打撃を受けています。
このため、日本取引所の新規上場申請については、新型コロナウイルス感染症の影響が事業計画に適切に反映されているかどうかを審査するという項目までできたそうです。

また、人的被害も甚大で、世界では死者が3万人を突破して未だ衰える気配がありません。
特に最近は欧米の発症者の数が多い、地域も限定されていない、ワクチンや有効な治療薬が存在しない、インフルエンザと違い暖かくなっても勢力が衰えない可能性が高いため今後も流行は継続しそうなどの理由から、最終的にはさらにその数は増えるものと予想されます。

その中で、日本は発症者の数が増えていて危険な状態ではあるものの、比較的対応が良く、善戦しているグループに入ると思います。
初動こそ有効な措置が取れなかったものの、その後は早い段階で素早い対応を行い、1000人強(2020年3月29日現在)の発症者で収まっています。
これは政府の対応策に対し誠実な対応を取っている日本在住の方が多いためというのが理由の一つであると思います。

これとともに政府が比較的早い段階で有効な対応を行ったということもあるでしょう。
これはなぜ可能であったのか。
あくまで私見ですが、2009年の豚インフルエンザ(新型インフルエンザ:H1N1)の教訓を彼らが活かした結果ではないかと思います。

2009年の豚インフルエンザの際に、我が国政府は様々な官庁からパンデミックBCMやBCPのガイドライン等が作成・公表されました。
おそらくこれらを彼らも使用したものと考えられます。

このような資料は今もインターネットで公表されています。
一例を以下にあげておきます。

内閣府
事業継続ガイドライン第三版 解説書
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline03_ex.pdf

中小企業庁
新型インフルエンザA(H1N1)対策のための事業継続計画
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/influenza/download/A_H1N1_BCP.pdf

中小企業BCP策定運用指針
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/index.html

厚生労働省
事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン(改定案)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0730-13e.pdf

これらは10年以上前のもので、少々古い情報ではないかと思うかもしれませんが、そのようなことはありません。
新型インフルエンザも新型コロナウィルスも同じパンデミックのグループに分類されており、新型インフルエンザのところを新型コロナウィルスに読み替えればほとんどそのまま使えます。

実際に上述のガイドライン等を読み解いていけば、彼らがほぼこれに基づいて動いていることがわかると思います。
喜ばしいこととはいえませんが、10年後に有効性が実証されたということでしょう。

新型コロナウィルスの猛威はまだしばらく続くことが予想されます。
今からでも遅くはありません。
皆様の会社、組織におかれても、パンデミック用のBCM・BCPを構築しませんか?
日本BCM協会では、そのようなご相談をお受けしています。

地震と予知能力

私は、富山生まれ育ちで地元のNTT(当時は、日本電信電話公社)に就職し、情報処理システムDIPS関連ソフトウエアの開発グループに配属していた。もともと北陸は、地震発生の少ない地域であるらしく、少年時代から大きな地震に対する特別な思いを抱いていたようだ、恐怖心が強く、できることであれば、地震発生の少ないこの北陸での生活を望んでいた。

しかし、現実は、そう甘くはなかった。昭和50年に東京勤務を命じられ、郵政省為替貯金システム関連ソフトウエア開発設計を担当した。5年間勤務した後に、北陸に転勤を希望した。

 当時、経理システムのソフト設計グループが金沢にいたので、次期システムの情報処理装置を東京大手町ビルから移設させることになった。兎角、地方の人間は、仕事で上京することは喜ばしいことであり、憧れに近い感情を持った。私もその一人であった。その反面、地震発生頻度の高い土地へは引っ越しには、いささか抵抗があった。

そのころから地震に遭遇しないように極力回避しなければという気持を強く持つようになり、自分に予知能力があれば、いいなと思うようになっていた。

 ナマズと地震について日本で最初に流行したのは、江戸時代・1855年の安政江戸地震の直後に発行された、ナマズの錦絵に由来しているようである。それまで伝承や一部での流言程度でしたが、江戸時代に「ナマズが暴れて地震が起きた!」といいうところから、鹿島大明神がナマズを押さえつけたり、地震に託けて儲けようとする絵が出回りました。

安政江戸地震から約200年経った現在、真面目にナマズと地震予知能力の関係について研究が進められていますが、結論から言うと「ナマズと地震の関係は薄い」ということである。

 情報処理装置の移転設置計画では、次の基本条件を堅持しながら、果敢に遂行していった。

  • 設置コストを必要最小限に抑える。
  • 情報処理装置の性能評価結果より選択する。
  • 設置場所はリスク低減の観点から、地震の発生頻度の少ない地域(金沢など)
  • 空き部屋の利用

当システムの導入には、多額の設計費用を必要としたため、収入の少ない北陸支社では、支社の学園敷地を売却して賄った。このシステムの地方導入施策により金沢に若い技術者が育ち、北陸先端科学技術大学院の創設に寄与したと思っている。

導入当初は多くの批判に晒されたが、これを機にシステムの地方導入が積極的に進められていった

自分の考えを最後まで貫き通して成果に繋がったことに満足している。

人間には、予知能力はないらしいが、予測することはできる。

例えば、首都直下地震が、この30年以内に確率70%で起こり得る、というように。

執筆:和田 正光

今年一年を振り返って

今日で2019年も終わりで、明日からは2020年となります。

今年は、BCM(事業継続マネジメント)という切り口から言うと、「水」の年であったように思います。
地震なども各地で起こっていましたが、やはり台風15号、19号の2つの台風が東日本を中心に大きな被害をもたらしたことが大きかったと思います。

地震も心配ではありますが、ここ数年台風等による水害が猛威を振るっているように思います。
地球温暖化の影響ともいわれ、それが事実であれば来年、再来年も楽観できないことが予想されます。
それ故そのためのBCMの構築、運用が非常に重要になってくる、そう確信できる1年だったと思います。
まだ構築されていない方がいらっしゃいましたら、当協会にご相談ください。

特に東京の下町はゼロメートル地帯が広がり、有事の際は非常に危険な地域となります。
ある方の試算では、大きな水害が発生して荒川や江戸川などの堤防が決壊したり、高潮などで水が入ってきた場合、その半数が地域内で避難できない状況にあるとありました。
そのようなことがあっても生き延びられるよう、きちんとBCMを構築、運用していくことが望まれます。

来年はいよいよ東京オリンピックです。
夏の開催であり、暑さ以外に台風という災害も想定されます。
何事もなければ良いなと思う反面、来年こそそのような有事に備えてBCMを普及、推進していきたいと我々は考えております。

今年一年ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
災害に強い日本に寄与すべく、頑張っていきたいと思います。

特定非営利活動法人日本BCM協会